ウェンシーとフェイマオタイは呪法が成功したのを確認すると、自分たちの風雨を招く能力を目の当たりにして、他人の命運をほしいがままにできたかのように感じた。この二人の若者は、血気にはやる年代である。しばらくの間は興奮さめやらず、やった事の結果がどういうものになるかを考えてもみず、また将来大きな罪悪と応報にあうことも考えていなかった。
任務を終えると、二人は暴風雨でびしょ濡れになったので、山の洞窟の中に入り、火を起こして暖をとることにした。
このとき、村の猟師たちが偶然洞窟の下を通りかかった。彼らは本来、獲物を捕って豊作の祝賀に供するつもりだったが、不意に空前絶後の雹に遭い、すべてを失ったのであった。
猟師の一人が慟哭の声を挙げた。「なぜ何の予兆もなく、突如として大量の雹が降り、裸麦が全滅したのか!?」
「ウェンシーの大悪人がやったのに違いない。奴は雹を降らせる法を学びに行ったと聞いている。やつはすでに多くの人を殺している。今度は雹だ」。別の一人がいまいましそうに言った。
「悪い奴だ。悪すぎる。村全体が、とんでもない損害だ。たくさんの人を殺しても気が済まず、今度は裸麦を全部押し流しやがって…」
「少し静かにしろ!見ろ、上の洞窟から煙が上がっている。中に人がいる証拠だ」。ひとりの年配者が言った。
「ウェンシーの野郎に違いない。すぐに村に戻って、人を集めてこよう。そうでなければ、村全体が奴に害される!」中の若者がそういって、村に戻って人を集めてきた。
フェイマオタイは下に人が来ているのを見てウェンシーに言った。「下に人が来ている。俺たちの足取りが勘付かれたのだ。君は先に行け。俺がおとりになって、奴らを巻いておくから」
ウェンシーは、フェイマオタイが力も強く勇猛なのを知っていたので、彼一人でも村人たちをやり過ごせると思い、安心して彼一人を残すことにした。
ウェンシーが去った後、村から大勢の人が押し寄せた。フェイマオタイがウェンシーになりすまし、この大勢の人の中に疾風迅雷の如く突っ込んでいくと、人馬の隊は算を乱して崩れた。彼が突っ込んだ後、村人たちはまた集合し、彼を追撃した。
(続く)