チベットの光 (17) 雹を降らせる法【伝統文化】

チベットの光 (17) 雹を降らせる法
参考写真 ( Chris Stenger / unsplash )

ウェンシーは黄金七両を手に入れると、行者に一銭を与えたので、行者はたいそう喜んだ。それからラマの母に七銭を与え、ラマには黄金三両を供養して言った。「私の母は、雹を降らせる法を学べと言ってきています。どうか先生、雹を降らせる法をお授け下さい」

 「その法を学びたければ、またヤントンタツェ・ラマのところに戻って、学ばなくてはならない」。ラマは答えた。

 こうして、グヤンバ・ラマは、手紙を書いて土産物とともにウェンシーにもたせると、ヤントンタツェ・ラマのもとへと帰らせた。ウェンシーは戻ってラマに拝謁すると、黄金三両をラマに供養し、手紙とともに土産物を一緒に渡した。

 「呪法は、うまくいったのか」。ラマは聞いた。

 「成功しました。三十五人もやっつけました。しかし、このために村人たちが私と母親を殺そうとしています。そのため、母が手紙で雹を降らせる法を学べと言ってきました。どうか先生、雹を降らせる法を授けてください」

 「いいだろう。雹を降らせる法を君に授けよう」

 ラマが「雹を降らせる法」をウェンシーに授けると、ウェンシーはまた練法堂で七日間修めた。

 修めてから七日目、対面する山間に一団の黒雲が現れ、閃光と雷鳴が轟き、暴風雨が吹き荒れ始めようとした。このとき、ウェンシーは自分に、風を呼び雨を招いて雹を降らせる能力が備わった事が分かった。

 それからしばらくして、村の裸麦は長々と立派に成長し、収穫期となった。ラマは、ウェンシーとともに雹を降らせるのに、同学のフェイマオタイを派遣した。

 この年、村の裸麦は例外的な豊作で、村の古老の多くがこのような豊作はまだ見たことがないと口々に言い、皆が興奮していた。そのため、個々に先に収穫しないで、まずは盛大な宴会を催してから、皆で一気に収穫しようということになった。

 ウェンシーは、村人たちが収穫を始める一両日前まで待って、村の前の山間の渓流のほとりに壇を設け、呪法に必要な各種の材料を揃えると、その作法を開始した。このとき、空には雲一つなかった。

 ウェンシーは呪法を唱えると、「護法の神!」と一喝し、村人たちから虐待された事を陳述しはじめた。ウェンシーは言えば言うほどのってきて、しまいには大声になり、泣き叫ぶようになっていた。すると、不可思議なことが起こった。元来、雲一つなかった空に、突如として一団の黒雲が発生し、それはだんだんと増殖し、みるみるうちに満天が曇ってきた。

 しばらくすると、天も地も暗くなってきた。

 村人たちは天候が不順なのを見て、血相を変えて走りだし、収穫を試みようとした。しかし、すぐに満天の黒雲のなかから閃光が轟き、雷がやまなかったので、皆が驚いて屋内に逃げ込み、出ようとしなかった。

 この瞬間、大粒の雹が空から降り注ぎ、裸麦を一粒も残さずにしたたかに打ち据えてから、雹がやっと止んだ。このとき、山間から大水が洪水となって押し寄せ、裸麦全部を押し流してしまった。

 村人たちは、今年豊作のはずであった裸麦が全部駄目になったのを目前にし、号泣するしかなかった。

 (続く)
 

(翻訳編集・武蔵)

転載 大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2021/03/70303.html

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