ウェンシーはここに至って、村人たちが彼を殺害しようとは思ってもみなかったが、それから数日後にあるヨガ行者が当地を訪れ、彼に会おうとした。彼に会うと、ウェンシーは始めてことの経緯を知った。
「私が巡礼の旅にでたとき、ちょうどあなたの郷里にさしかかり、あなたのお母さんの家に数日間泊めてもらいました」。行者はウェンシーの母親や妹のこと、郷里の状況をウェンシーに言って聞かせた。彼は話の中でウェンシーの郷里で発生した大事件について触れた。「…少し前、あなたの郷里で惨事があった。一番の地主さんの家で慶事があった際に、三十五人が死亡した…」
ウェンシーはここまで聞くと、すぐに何が起こったのかを悟った。なぜなら、彼が呪法を修してから十四日目の晩、ちょうど叔父の家で惨事があったその夜だが、護法の神が彼のところに現れて、手に三十五人の頭と心臓を携えていたのだ。神はウェンシーに尋ねた。「これらの者たちを始末してほしいのだな」「後、残り2名を殺すべきだが、どうだ」
ウェンシーは母親の願いが叶ったと思い、満足して言った。「彼らは自分たちの因果応報の苦を背負って生きるよう、世に留まらせてください」
このようにして、護法の神は叔父と叔母の二人を誅することがなかったので、この二人は惨事から逃れた。
行者は事の次第を話し終えると、懐から一通の手紙をとりだしてウェンシーに言った。「これは、あなたのお母さんからです」。ウェンシーは母からの手紙ということで興奮し、一人きりになると静かに読んだ。しかし、読み終えると、喜ぶどころか却って悲しくなった。
母親からの手紙には、ウェンシーの呪法によって叔父の家の三十五人が死亡し、仇を討ち、彼女は大変に嬉しく、亡き父も草葉の陰で喜んでいることだろうと書かれている。しかし、村人たちはこのために人を派遣してウェンシーを殺し、それから彼女を殺そうと企てているので用心するように、というのだ。彼らがこのように報復の意を抱えるなど絶対に許せない、だから今度は「雹を降らせる法」を学んで、村全体の収穫を駄目にするように、と書かれている。もしウェンシーがそれをできるようになれば、彼女は満足だと。
手紙の最後には、もし学費が足りなければ「北方の山に、黒雲が深くて六星の光を放つところがあり、そこに我が家の親戚が七戸ある」とあり、その親戚たちのところに行けば手にすることができるという。また、「もし親戚の住所が分からず、山村が見つからなかったら、行者の身を探せばすぐに得ることができる。山村の中に行者が一人で住んでおり、他に求めてはならない」と書かれていた。
「これはどういうことなのだろうか」。ウェンシーは読み終えると、あっけにとられ、母親の意味しているところが分からなかった。彼は北方の山に親戚がいるなどとは聞いたこともなかった。仇を討てば家に帰れると思っていたのに、母親によると、意外にも村人たちが彼を殺し、そのあとで母を殺そうとしているという。彼は母を思い、故郷を思ったが家に帰ることはできず、母は雹を降らせる法を学べという。しかし、彼の学費はすでに底をつき、手紙にある山村や親戚とはどこなのか。もし学費がなければ、雹を降らせる法を学ぶことができず、家にも帰れない。彼は考えれば考えるほど辛くなり、涙を禁じ得なかった。
(続く)
(翻訳編集・武蔵)