村人が声のする方を見てみると、ウェンシーの母が自分の衣服を破った布きれを棍棒に結びつけて、大声で叫びながら近づいてきた。彼女はその棍棒を振りながら大声で笑い、それはまさに狂気の沙汰であった。
「みんな見てごらん!ウェンシーの呪いで皆が死んだわ。この戦いに勝ったのよ!この人たちは、楽しんでいて死んだのよ。いい死にざまよ。不当に楽しむことは、悪いことをするのと同じ。家の中の財宝も、家畜もすべてなくなって、新郎も新婦もいなくなったわ。私は今生きている、生きて息子の偉業を目にしたから、こんなに気が晴れたことはないわ!私の人生でこんなに愉快なことはないわ。はははは!」
ウェンシーの母は旗を振りながら、笑って叫び続け、まるで理性を失ったかのようだった。彼女は喜んでいたが、その喜びの背後には血のにじむような悲しみを含んだ、彼女自身が対面することのできない悔恨が潜んでいた。息子がこのように大量の殺人を犯したら、その罪業をどうやって償還するというのだろうか。
呪法を用いて殺人を行えば、例え官_li_には裁かれることがないとしても、間違いなく死後に地獄に落ちて償うことになるだろう。ましてやこのような大量殺人とは、ウェンシー親子に何らかの天命でもあったというのであろうか。このような道理はウェンシーの母も分かっていたが、ただ恨みに心が眩み、振り返ることのない破滅の道をまっしぐらに突き進んでいた。
そこに集まっていた村民たちは、ウェンシーの母の狂態を目にし、凍り付いて口を開かなかった。
しばらくして一人が口を開いた。「彼女の狂態と話には恐れ入る、本当に…」
また別の一人は、「どうも彼女の話は本当らしいが、全く限度を超えているよ」
この時、皆が驚愕から目が覚めた。呪法による殺人は、前々から聞いていなくもなかったし、その存在を懐疑していたわけではないが、実際に目の前でそれが起こると、その恐怖と驚愕とが身に沁みた。ウェンシーの母はすぐに遠くに去ってしまったが、彼女の話は、皆の頭の中でぐるぐるとまわっていた。この時、村民たちの驚愕は憤怒へと変わった。
「あの気違い婆さんが、こんな大事をしでかして、死人も大勢出して、それでいてあっけらかんと笑ってやがって。彼女を捕まえて、心臓を抉り出して死者の霊前に供えないと、死んだ者が浮かばれない」
「彼女を捕まえて殺す?何のために?また彼女の息子の恨みをかって、呪われるだけだ」
その中の老人が言った。「まずウェンシーを殺して、それから彼女を殺せば、問題ない」
こうしてウェンシーの母を殺すことは先送りとなった。しかし叔父はこれを聞くと、狂気にも似た叫び声を上げた。「息子は死んで、その新婦も亡くなって、親友たちも死んだ。もう私も生きていてもしょうがない。彼女を殺す!」と、殺人の衝動を口にした。皆があわててそれを遮った。
「こんな大事が起きたのも、皆あんたが原因だ。あんたが勝手に先走りすると、またウェンシーに睨まれて、皆が生きてゆけなくなる。あんたがそれでもやるというのなら、われわれがあんたを始末してやる」
このようにして皆が叔父をなだめ、まずウェンシーをどうやって殺害しようかと思案を巡らし始めた。
(続く)
(翻訳編集・武蔵)