弟子規(16)【伝統文化】

緩(Huǎn) 揭(jiē) 簾(lián),勿(wù) 有(yǒu)聲(shēng);寬(kuān) 轉(zhuǎn)彎(wān),勿(wù) 觸(chù) 稜(léng)。

執(Zhí) 虛(xū) 器(qì),如(rú) 執(zhí) 盈(yíng);入(rù) 虛(xū) 室(shì),如(rú) 有(yǒu)人(rén)。

事(Shì) 勿(wù) 忙(máng),忙(máng) 多(duō) 錯(cuò);勿(wù) 畏(wèi)難(nán),勿(wù) 輕(qīng)略(lüè)。

斗(Dòu)鬧(nào)場(chǎng),絕(jué) 勿(wù) 近(jìn);邪(xié) 僻(pì) 事(shì),絕(jué) 勿(wù) 問(wèn)。

【注釈】
﹙1﹚緩:ゆっくりと。
﹙2﹚揭:つまみ上げる。
﹙3﹚簾:すだれ。通常、竹や布でできている。
﹙4﹚勿:してはならない。
﹙5﹚聲:聲や音。
﹙6﹚寬:距離を大目にとる。
﹙7﹚轉彎:方向を変える。
﹙8﹚觸:接触する。
﹙9﹚稜:角、物体の直角部分。
﹙10﹚執:とる。
﹙11﹚虛:中身が空。
﹙12﹚器:用具の總稱、如儀器、武器、器具、器皿等。
﹙13﹚如:あたかも。
﹙14﹚盈:充滿している。
﹙15﹚室:部屋の内部。
﹙16﹚事:人が何かをするさいの状況。
﹙17﹚忙:忙しい。
﹙18﹚錯:間違う。
﹙19﹚畏:恐れる。
﹙20﹚難:容易でない事。
﹙21﹚輕:輕視する。
﹙22﹚略:粗忽にする。
﹙23﹚斗:相爭う。
﹙24﹚鬧:騒々し喧嘩する。
﹙25﹚場:人の多く集まる場所。
﹙26﹚邪:不正な思想或いは行為。
﹙27﹚僻:偏っていて邪まな。
﹙28﹚問:興味を示して聞く。

【日文参考】

 門や扉の前の簾をつまみあげるときはゆっくりとし、無駄な声を挙げない。角を曲がるときは、一定の距離を大目にとって角にぶつからないようにする。空の容器や用具をもつときは、中に物がはいっているかのように慎重に取り扱う。誰もいない部屋に入る時は、人がいるかのように入る。

 事をなす際には、急ぎすぎない。急ぐと間違いが発生しやすいからである。困難な事を恐れず、また簡単な事を軽視して粗忽になってはいけない。喧嘩の起きやすい騒々しい場所に接近してはならない。妥当でない偏った邪な思想や行為について、興味をもって聞いてはならない。

【参考故事】

 清代の安徽省に殷さんと柳さんという二人の富豪がいて、互いに親交があった。あるとき柳さんが病気になって危篤になり、まだ幼少であったその一人息子は殷さんに預けられて面倒を看られることとなった。

 柳さんの遺児は大きくなって成人すると、不良仲間と一緒になって、毎日のように賭博と飲酒に明け暮れ、盛り場を遊び回るようになった。殷さんは二度三度と彼に注意し、涙まで流して悔い改めるよう促したが、彼は聴く耳をもたなかった。殷さんは彼が目覚めないのを悟り、人をやって彼と賭博をさせ、負けると田畑を売り、売った田畑をまた人をやって買い戻していた。それから後、柳さんの田畑、不動産、金銀珠寶などを売り尽くし、幾年もしないうちに膨大な家産が空になっていたが、すべては殷さんに返っていた。

 山窮水盡の柳さんの遺児は、親戚を頼って食事をしていたが、受け入れられず侮辱されて追い出された。寺院や道観に行っても、修行の聖地は收容所ではなく、最後には家々を回って食を乞う乞食にまで身を落としていた。殷さんは、時が至ったと観て、彼を家に呼び戻し、風呂に入れて食事をさせた後に言った。「以前、おまえに言ったことをまだ覚えているか?」柳さんの遺児はこれを聴くと泣き出し、自分のしでかした過ちを深く悔いた。殷さんは言った。「失ったものはもう戻せない。これからは勉強に励んでくれ、そうすれば将来は必ず成功する」

 それから柳さんの遺児は猛勉強を始め、一年もすると科挙の試験に合格した。殷さんは彼が前非を悔いているのを見極め、以前に買い戻していた家産を全部彼に返して言った。「以前おまえは私の戒めを聞き入れなかったので、窮まらないと悔い改めないと悟り、死中に活の方法を取らざるを得なくなった。以前おまえが賭博をしていた相手は、私が派遣した者で、おまえから物を買った人もわたしが頼んだ人だったのだ。私の計は成功した。おまえの前途は洋々としたものになった。これで、亡きおまえの父親から受けた負託も反故にしなくて済んだ。死んでもあの世で合わす顔ができたというものだ」。柳さんの遺児はすべてを悟りはらはらと涙を流して頭を垂れた。

(竜崎)

転載 大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2021/03/70399.html

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