チベットの光 (11) 殺人呪術【伝統文化】

参考写真 ( Raimond Klavins / unsplash )

 ウェンシーはここまで言うと、たまらずに泣き出して嗚咽しながら続けた。「ですから、私はまだ家に帰れないのです。どうかわたしを憐れに思って、もっとすばらしい呪法を教えてください」

 「あなたの叔父さん夫婦と隣近所はどのようにあなたたちを侮辱したのか?」ラマは尋ねた。

 ウェンシーは涙しながら、叔父夫婦に家財を略奪された経緯や彼らに虐待されたことなどを話した。ラマはウェンシーの一身上のことを聞くと堪らずに涙を流し、フェイマオタイという学生を呼びつけ、ウェンシーの郷里まで行って事の真偽を調べるよう言いつけた。

 数日後、フェイマオタイは戻ってきてラマに告げた。「先生、ウェンシーの言っていることは本当でした。どうか、彼に仇を討つ呪詛を教えてあげてください」

 ラマは頷くと、ウェンシーに言った。「ウェンシー、私が最初から秘法を伝授しなかったのは、きみがそれを妄りに濫用し、後悔することを恐れていたからだ。だが、今きみの親戚が悪かったということがはっきりしたので、私の呪詛を学んで彼らを処罰したらいい」

 ラマは続けて言った。「私には《殺法》と《毀法》という秘法があるが、それらは私から教えるわけにはいかない。私はグヨンバ・ラマとのあらかじめの取り決めがあり、自分たちの秘法は相手から伝授しなければならないとの約束があるからだ。言い換えれば、私の秘法を学ぶには、彼の方に行って学んでもらわなければならず、彼の雹を降らせる《降雹法》は代わりに私が教えるのだ。今きみを彼に紹介するので、そこに行って私の二つの秘法を学びなさい」。そう言うと、ラマはウェンシーのために紹介状をしたためた。

 ウェンシーはグヨンバ・ラマに会うと、携えてきた礼物をすべて供養し、自らが経験した悲惨な境遇と、呪法の習得を希望する理由を述べた。

 ラマは言った。「私とヤントンタツェ・ラマとは一蓮托生の仲だ。彼の紹介なら、秘法を教えてあげよう。ではまず、山の麓に行って人の知られないところを探し、そこに練法堂を築きなさい」

 こうしてウェンシーは、山の辺鄙なところに簡単な練法堂を建て、牛のように大きな石でそれを隠した。ラマはその練法堂の中で秘密の口訣を伝授した。

 ウェンシーはその堂内で七日間修めた。七日目、ラマが来て言った。「この修法には七日かかるが、もう七日たったのでいいだろう」

 「しかし私の仇はすごく遠いところにいるので、さらに七日間修めます」とウェンシーはラマに言って、さらに七日間を修めた。

 十四日目の夜にラマが来て言った。「今晩、法壇のあたりで秘法の成果があらわれるだろう」

 (続く)
 

(翻訳編集・武蔵)

転載 大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2021/03/69969.html

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