そして、母は叔父と叔母、親戚、友人、隣人などを大きな客間に招いて盛大な宴席をもうけた。客人が席につくと、母はすっくと立ち上がり重々しく口を開いた。「今日は、息子ウェンシーが十五歳になる誕生日です。このたびの宴会は、息子が成年に達したことを祝うものですが、この場をかりて皆さんの前で亡き夫の遺言を読み上げさせていただきたいと思います」。すると母方の叔父が、亡き夫ミラ・チャンツァイの遺言を大声で読み上げた。
読み上げると、大きな客間は静まり返り、酒肴をする音は何も聞かれず、空気が凍りついた。
母は、重々しい空気を振り払うように言った。「現在、ウェンシーが成年に達し、こうして宴席をもうけ、ジェサィを嫁に迎えることもできるようになりましたので、亡き夫の遺言通りウェンシーに家財を相続させたいと思います。今皆さんがお聞きになりましたのは、ウェンシーの父親が存命中に残した遺言です。当時、皆さんも同席し、一緒にそれを聞いたはずです。ですので、現在叔父夫婦が管理している財産は我が家に返還していただきたく思います。ここ数年来、叔父夫婦と友人の皆さんには大変お世話になりました」
意外なことに、母が話し終えると、叔父夫婦が大声で叫び始めた。「財産!?あなたたちの財産なんかどこにあるの?」
来場していた人たちは、叔父夫婦のほうを振り返ると誰ひとりとして声を発しなかった。
叔父は怒鳴った。「あんたたちに何の財産があるというのか。ミラ・チャンツァイが若かった頃、わたしたちからたくさんの田んぼ、金、牧畜を借りた。彼が死んだら、それらを返すのはあたりまえじゃないか。あんたらには何の財産もないよ!」
「その遺言は誰が偽造したのか。ここ数年、わたしらが無条件でくわしてやっていたのに、こんな破廉恥なことをやって、まったく恩を仇で返す人たちだよ」
叔父は、怒鳴ってタンカを切ればきるほどに熱が入ってきた。このとき、彼は完全に忘れていた。来場の人たちは、当時の遺言をよく耳にしていたのだった。ミラ・チャンツァイが飛ぶ鳥の勢いであった頃、叔父夫婦はよその土地からやってきて、彼に助けを求めた。ウェンシーの父親はそんな叔父夫婦を快く受け入れ、たくさんの金を与えたほか、金を儲けて良い生活を送れるように商売のやり方も教え、よくしてやったのだ。それは皆知っていた。
皆は叔父の言っていることが無軌道なことであると分かっていたが、その気勢の激しさに、誰一人として口を開こうとしなかった。叔父はこのためにますます図にのって罵り続け、罵っていることが本当のことのようになってきた。彼は宴席をはずすと地団駄ふんで母ら三人に吼えたてた。「あんたたち、聞こえなかったのか?この部屋だってわれわれのもんだ。あんたたちは、すぐにでも出て行ってくれ!!」
(続く)
(翻訳編集・郭丹丹)