「為善最樂」。善いことをすることが、最高の楽しみだということわざです。社会が今のように複雑ではなかった古代、このような純粋な境地に達した人がたくさんいたのかもしれません。
東漢の時代(A.D. 25–220)、漢明帝の頃、劉蒼(りゅうそう)という官吏がいました。帝から絶大な信頼を得ていた彼は東平という場所を治める王の位を授かりました。
帝がしばらく出かける時は、いつも劉蒼が都を守る役を担いました。彼は高貴な職に就いていましたが、決しておごらず、他の官僚に見られるような贅沢な暮らしを送ることはありませんでした。
劉蒼は常に民衆の生活を心配し、国の繁栄と安定を願い、帝に様々な助言を行いました。
劉蒼の誠実さと道徳心の高さは評判を呼び、彼の名声は高まっていきました。しかし、劉蒼はこれに不安を感じ、早々に位を返上して自分の国へ戻りたいと帝に申し出たのです。
劉蒼を気に入っていた帝は納得できませんでしたが、彼の意思が固いのを見ると、仕方なく許しを出しました。
やっと国に帰る許可が下り、東平の地に戻った劉蒼は、民衆のために働きました。
後に、久しぶりに劉蒼に会った帝は、彼に故郷に戻って一番楽しかったことは何かと聞きました。すると劉蒼は、「善いことをすることが、一番楽しかったです」と答えました。
その後、これがことわざとなって後世に伝えられました。
(翻訳編集・郭丹丹)