叔父夫婦の支持者は多く、ウェンシー親子はそれに勝てず、彼らの提案を受け入れるしかなかった。しかし、親子三人は財産がとりあげられてからは、爪に火をともすような生活が始まるとは想像もしなかった。
始めのころは皆が親子3人に同情していたが、彼らが実際にやせ細って困窮するにつれ、だんだんと彼らから足が遠のき、却って富裕になった叔父夫婦の元へ通い、飲食を楽しむようになった。最後には、ウェンシ-がこのような悲惨な生活を送っているのは母親のせいであり、彼女がよく面倒を見ていないからだと皆が思うようになった。
「あの後家さんの様子を見てみなよ」と人々は密かに噂をした。「旦那さんが生きている頃はたいそう羽振りがよかったけれど、旦那さんが亡くなったら金メッキが剥げて無残なかぎりだわ」
「本当に、ミラ・チャンツァイのたった一人の跡取りが、あんなひどいことになって。亡くなった旦那さんも、棺桶の中からはい出てきて、どうやって育てているか見に来るかも…」
人々の噂話やデマはどんどん広がり、ますます滑稽な話となって、彼らをやり玉にした。ウェンシーの母は、ほぞを噛んでじっと耐え、これらの人情酷薄な人々を見ていた。以前、彼女にとりいろうとして媚を売っていた人たちも、今では嘲笑する側に回っていた。以前、彼女が彼らを助けていたのに、なぜこのような仕打ちをされるのか、彼女は残念な気持ちでいっぱいだった。
このとき、ジェサィの親がウェンシーに服を与えて慰めた。「ウェンシー、世の中は無常だ。何一つとして、変わらないものはない。人生は過ぎゆく客の如し、財物は朝露の如しだ。何か得ることがあっても喜ぶことはないし、何かを失うことがあっても落ち込むことはないぞ」
ウェンシーはこれを聞いて、分かったような分からないようなそぶりで頷いていたが、家に帰ると母親が恨みと怒りで常にいっぱいになっているので、ウェンシーの頭上には黒い雲が垂れ込めているようで、息をつくいとまがなかった。ジェサィの父親の言葉は、沸き立つ黒い波のような母の恨みですぐに洗い落とされてしまった。
このような苦しい日々が点xun_齠冾ニ過ぎていき、瞬く間に数年が過ぎ去った。ウェンシーは15歳になっていた。
ウェンシーの母親は、実家からもらった畑を持ち、それは肥沃な土地であった。ウェンシーの叔父がこの畑を手伝い、そこから稼いでもうかった金を彼女に与えていた。ウェンシーが15歳になった日、彼女はこの金でたくさんの肉と大麦を買ってツァンバ※をつくり、酒を買って客をもてなす準備をした。
貧しかった母が急にこのようなことをやり始めたので、人々はまたかんかんがくがくの議論を始め、皆が勘ぐった。「あの人は、皆をお客として正式に招待して、預けた家財を取り戻そうとしているんじゃないのかしら…」
(続く)
(翻訳編集・武蔵)
※ツァンバ…チベット人の常食の一つ。大麦を炒って粉とし、これに茶と酥油(牛乳あるいは羊乳から抽出した脂肪)を加えて練ったもの。