【脱党支援センター 2020年6月16日】
埼玉県や神奈川県など日本の地方自治体は、中国企業が作成した短編動画アプリ「TikTok(ティックトック、抖音」と連携して、地域の広報に活用している。しかし、TikTokはかねてからセキュリティ問題が取り沙汰され、中国当局の言論統制も取り入れられている。
TikTokはこれまでに広島県、大阪府、埼玉県、神奈川県、横浜市、神戸市、福岡市の7自治体と情報発信サービス等に関する業務提携をしている。
5月20日、神戸市とTikTokは「神戸の魅力の発信、地域経済の活性化、新型肺炎の流行防止等に関する協定」とする業務提携を締結した。 第一弾として「神戸・癒し学び隊」をキーワードにした動画を募集した。当選者には約1カ月後に審査を行い、TikTokから特別賞をプレゼントするという。
また、6月4日には、埼玉県はTikTokと、新型コロナウイルスに関する情報配信サービス契約を締結した。2021年、埼玉県は誕生150周年を迎え、大野元裕知事は「埼玉県の魅力をTikTokを通じて発信したい」としている。
2019年10月、横浜市とTikTokは乳房健康啓発プロジェクトを立ち上げた。短い動画を通じて、乳がんやへルスチェックに関する知識を提供している。TikTokとの連携は医療分野では初の試みという。横浜市はさらに2020年6月5日、同市消防局とTikTokとの連携協定を締結し、TikTokプラットフォームに地震、台風、水害、熱中症対策などの情報を音楽や動画で発信する特別アカウントを開設した。
神奈川県は2019年11月、TikTokの北京に拠点を置く「字節跳動」(ByteDance)社とプロモーション協力協定を締結し、TikTokのプラットフォームをフルに活用して県の施策や取り組みをアピールしている。 神奈川県の黒岩祐治知事は、TikTokは自治体の仕事の情報を県民に発信するための有効なプラットフォームであり、今後も活用していくと述べた。
2017年8月にTikTokは日本版が発表され、11月下旬には日本のApp Storeのチャートでダウンロード数1位を獲得した。Google Playの月間総ダウンロード数チャートランキングは、通話アプリLINEを抜いた。TikTokの日本公共政策担当・山口琢也氏は、TikTokの影響力を利用して日本の社会に貢献したいと述べている。
TikTokは5月、世界で20億回ダウンロードを記録した。ブルームバーグ5月20日付によると、コロナ危機のなかでも広告収入を増やし、字節跳動の資産は1000億ドル(約10兆8000億円)を超え、世界で最も多くの資産を持つ民間企業の一つとなっている。創業者の張一鳴(Zhang Yiming)氏の純資産は、2019年前期で162億ドル(約1兆7600億円)にのぼると米誌「フォーブス」は見ている。
字節跳動は5月初旬、米ウォルト・ディズニーの動画配信戦略の立役者ケビン・メイヤー氏を引き抜き、最高執行責任者(COO)に指名したと発表した。
こうした日本の広報活動と潤沢な資産および世界的な影響力の拡大から、日本の地方自治体ほか企業が今後、TikTokと連携を図る可能性がある。しかし、TikTokは米国やインド、台湾などからセキュリティ問題が懸念されているアプリとみなされ、軍や公安当局は使用禁止としている。
北京を拠点とするTikTokは、中国国内法を遵守する必要がある。中国のサイバー関連法では、国内にサーバーを設置する企業は、政府とデータを共有することを義務としている。
さらに、投稿された内容が中国共産党の検閲に違反している場合、削除対象となる。最近、英ガーディアン紙が内部資料として報じている。TikTokには、天安門事件や香港民主デモ、法輪功迫害、チベット・ウイグル人の弾圧など、こうした中国共産党体制にとってネガティブな情報を削除する指針がある。
内部のガイドラインによると、世界で影響力のある指導者20人に関する投稿を禁止にしている。その20人は日本の安倍晋三首相、米国のドナルド・トランプ大統領、バラク・オバマ前大統領、インドの精神指導者マハトマ・ガンジー氏、ナレンドラ・モディ首相、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、北朝鮮の金日成氏、金正日氏、金正恩氏など。習近平国家主席は含まれていない。報道の後、TikTokはこれらのガイドラインは既に廃止されたとコメントしている。
この回答のように、TikTokは一貫して、中国当局とデータ共有や検閲の受け入れについて否定している。しかし、TikTokには常に「政治的なトピックが上がらない」という疑惑がある。すべては「楽しいコンテンツ」であり、これらが上位に上がるというのが公式説明だ。いっぽう、政治的なトピックを投稿する少数の人気ユーザーは「偶然」の投稿禁止措置に遭ったり、他のユーザーに見えなくなったり、説明が明白ではない検閲を受けたりする事例がある。
2019年、TikTokでメイクアップ方法を装い、中国政府が新疆ウイグル自治区のイスラム教徒を強制収容していることを訴える動画を投稿した17歳の米国人女性のアカウントは、一時的に凍結した。TikTokは、これを「人為的なミス」と釈明している。
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、米陸海空軍、海兵隊、沿岸警備隊は、軍が支給したモバイル端末でのTikTok使用を禁止した。個人所有の端末にはこの制限は適用されないものの、軍は職員とその家族にアプリの削除を推奨している。
この措置について、米軍広報担当は、米国に敵対する国の政府はソーシャル・ネットワークを通じて、軍事的な機密情報を引き出したり、攻撃を仕掛けることも考えられると見ている。これは、他のソーシャルサービスも同様だとしている。
台湾の蔡英文政権も、政府や軍関係者に対して中国企業が作成したアプリの使用の禁止を通達している。
米ソーシャルサイト「レディット(Reddit)」のスティーブ・ホフマン最高経営責任者(CEO)は2月、TikTokには盗聴や指紋収集などさまざまなセキュリティ問題や情報漏えいの危険性があるとして、「パラサイト(寄生虫)的なスパイウェアだ」と強く批判した。
米ワシントンDCに拠点を置くピーターソン国際経済研究所は2019年1月、「TikTokは中国当局に個人情報や位置情報のほか、各国の軍事施設などの機密情報を提供している可能性が高い」と分析している。
同年11月、米上院議会の犯罪とテロリズムに関する小委員会で、ジョシュ・ホーリー議員は、中国共産党の情報収集を米国の安全保障に関わると指摘したうえで、「中国共産党に服従する企業(字節跳動)は、あなたの子どもたちの居場所を知っており、子どもたちがどんな顔をして、どんな声で、何を見ていて、何を共有しているかを監視している」「TikTokが何であるかを知らないのであれば使わない方がいい」と述べた。
転載 大紀元(編集・佐渡道世)