「第2の中央党校」米ハーバード大学、中共ウイルスの感染者相次ぐ

国立感染症研究所 提供

米ハーバード大学のローレンス・バコウ学長と妻が3月24日、中共肺炎(新型コロナウイルス肺炎、COVID-19)に感染したことが明らかになった。米で最も長い伝統を持つ名門校に中共ウイルスが侵入したことに世界が驚かされた。

過去20年間、ハーバード大学は中国共産党指導者の子弟を受け入れ、中国政府・軍高官向けの研修プログラムを立ち上げ、中国人富豪から巨額な支援金を受け取るなど、中国当局と親密な関係を築いた。

バコウ氏は学長に就任した翌年の2019年3月20日、中国を訪問し、北京の人民大会堂で習近平国家主席と会談した。中国共産党機関紙・人民日報電子版の同月21日の報道では、習主席はバコウ学長が初めての外国訪問に中国を選んだことについて、「米中間の教育交流を重視している表れだ」と称賛した。

当時、米中双方は貿易戦の真っ只中にいた。両国政府は互いにすでに2回の追加関税措置を発動し、3月初めに北京で第8回目の米中閣僚級通商交渉が行われたばかりだった。このタイミングのバコウ学長の訪中は物議を醸した。

同大学のファウスト前学長が2007年2月就任し、翌年3月に北京を訪問した。当時、習近平氏は国家副主席として、ファウスト氏と会談した。

習近平氏の娘、習明澤氏は2010年5月~2014年まで、同大学心理学部に在籍したと伝えられている。

ハーバード大は「第2の党校」

ハーバード大学ケネディ政治大学院は1998年以降、中国共産党政権の高官を対象にした研修プログラムを実施した。過去20年、1000人以上の高官が同校に留学した。この人数の多さから、ハーバード大学は、中国共産党の「第2の党校」と呼ばれるようになった。

2001年、ケネディ政治大学院は、中国の清華大学や国家発展改革委員会と共同で、中国高級官僚研修プログラムである「中国公共管理高級研修班」を始めた。毎年、中国の中央政府や地方政府の幹部約60人が、ハーバード大学に派遣される。数カ月の滞在中に、行政学などの授業を受けるという。

中国時事評論家の横河氏によると、1998年に当時の中国最高権力者である江沢民が、ハーバード大学と国家発展改革委員会らの研修プログラムの構築を主導した。横河氏は2017年5月、中国語ラジオ放送「希望の声」の番組で、「1997年、江沢民が訪米中、ハーバード大学でスピーチを行って以降、江沢民とハーバード大学が急接近した」と話した。

横河氏は、江沢民が同大学での研修プログラムを推し進めた結果、李源潮・元国家副主席、李鴻忠・元天津市党委員会書記、楊衛澤・元江蘇省南京市党委員会書記を含む多くの江沢民派の高官がハーバード大学に短期留学したと指摘した。

米ニュースサイト「スレート(Slate)」は2012年5月23日の報道で、李源潮氏はハーバード大学で研修を受けた最初の党中央政治局委員であるとした。

李氏は2002年、江蘇省南京市党委員会書記に着任した直後、党中央組織部の派遣でハーバード大学ケネディ政治大学院に留学した。

江沢民の孫、江志成(34)氏はハーバード大学経済学部を卒業し、金融大手のゴールドマン・サックスに入社した。江沢民派の薄熙来・元重慶市党委員会書記の息子、薄瓜瓜氏は2012年5月、ケネディ政治大学院を卒業した。

「中国の高官らはほとんど英語が話せないので、ハーバードに行っても、中国語で研修を受けていた。だから、実際に高官らにとって、ハーバード大学での研修プログラムは、福利厚生の一部で観光旅行のようなものだ。この研修プログラムを受ければ、箔がつくから、帰国後に昇進の機会が増えるという利点がある」

また、横河氏は、中国政府の高官がハーバード大学に留学することは、共産党の対外統一戦線工作の一環でもあり、特に外国の学術機関における共産党の影響力拡大に有利だとの見方を示した。

「中国共産党は設立以来、絶えず統一戦線工作を続けてきた。各時期にその特徴があったが、ハーバード大学が中国共産党の第2の党校になったのは、江沢民政権と直接、関係する」

2009年10月中旬、前述の李源潮氏は党中央政治局委員兼党中央組織部の長として、米国を訪問した。この訪問には2つの目的があった。1つ目は中国当局の海外人材招致計画、「千人計画」を米国で推進することにあった。2つ目は、李氏の留学先だったハーバード大学で講演することだった。

中国当局は、「千人計画」に参加した海外の学者や技術者を通じて、海外のハイテク技術を盗んできた。

米上院調査小委員会(Senate Permanent Subcommittee on Investigation)が2019年11月18日、報告書を公開した。調査では、過去十数年間、中国当局は千人計画によって、米国科学者や専門家7000人以上を招致し、米の科学研究成果を不当に取得した。

今年1月28日、米司法省は、ハーバード大学の化学・化学生物学部長、チャールズ・リーバー教授を、中国当局との関係について虚偽報告をしたとして刑事起訴した。リーバー教授はナノテクノロジー研究の第一人者だという。

肖建華氏による巨額寄付

米ラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、米政府は中国当局による学術界への浸透工作に対する危機感から、今年2月、ハーバード大学とイエール大学について調査を開始し、両大学に過去8年間に受け取った外国からの寄付金に関する書類や金額の明細を要求した。

米教育省が出した声明の中で、特にハーバード大学について、外国から受け取った資金を管理する体制を整えておらず、米政府に全部報告していなかったと批判した。教育省は、同大学に対して、中国政府や通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)、孔子学院の運営機関である中国国家漢語教育指導弁公室などを含む資金提供者との金銭のやり取りを詳しく報告するよう要求した。

米非営利組織(NPO)「クラリオンプロジェクト」が米教育省の公開情報を分析した結果、2012年以降、中国当局は、米の87の大学に計6.8億ドル(約729億円)を提供したことがわかった。ハーバード大学が受け取った金額は約7927万ドル(約85億円)で、各大学の中で最多だった。

資金提供者に中国富豪の名前が連なる。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は2017年4月に調査記事を掲載し、中国最高指導部や軍当局と深いつながりを持つ中国人富豪で実業家・肖建華氏のハーバード大学への寄付について紹介した。

2017年1月27日、中国当局は香港滞在中の肖建華氏を本土に連行した。肖氏は、共産党内の江沢民派の金庫番とされる。習近平政権は、反腐敗キャンペーンの実施や金融セクターへの締め付けの一環で、肖氏を拘束したとみられる。

WSJは、数百件の会社間取引記録を調べ、情報筋を取材した結果、中国軍系の武器取引企業、保利集団(China Poly Group Corp.)が近年行った3件の巨額取引はすべて肖氏と絡んでいたと報じた。その中の1件は、ハーバード大学への寄付だった。

WSJによると、2014年、肖建華氏はハーバード大学ケネディ政治大学院のアッシュセンター(Ash Center for Democratic Governance and Innovation)に対して、2000万ドル(約21億4384万円)を寄付すると申し出た。その後、肖氏は、資金は自身ではなく、第3者側が支払うと示した。これに対して、ハーバード大学側が出資者の身元を不安視したという。

WSJは、アッシュセンターの2014年春の通信記録を入手した。この中で、同センターは、香港の嘉泰新興資本管理有限公司(JT Capital Management、以下は嘉泰新興)から総額1000万ドル(約10億7204万円)の「高価な贈り物」を受けたとの内容があった。WSJは、嘉泰新興は、保利集団傘下の子会社だとの見方を示した。

ハーバード大学側はWSJの取材に対して、「嘉泰新興は、肖建華氏が発案した中国幹部養成プロジェクトを支持している。同プロジェクトが提示した参加者には、中国政府の官僚と某銀行の上級幹部1人が含まれる。この銀行の一部(株式)は、明天系が保有している」と述べた。

言い換えれば、肖建華氏は、ハーバード大学に中国当局の高官や自身の企業の幹部を研修させるために、嘉泰新興を通じてハーバード大学に1000万ドルを寄付した。

「明天系」とは、肖建華氏が設立した投資会社「明天控股集団」のことだ。

しかし、最終的に肖建華氏が嘉泰新興の名義で寄付したのか、それとも保利集団が寄付したのかは不明だ。

教職員200人が中国と関係

一方、ハーバード大学ケネディ政治大学院は、将来中国最高指導者に登り詰める高官とのパイプ作りを重要視している。横河氏によれば、中国高級官僚向けの研修プログラムが発足後、肖建華氏らの中国人や香港富豪によるハーバード大学への寄付が増えた。富豪らは、中国高官を受け入れているハーバード大学に寄付することで、将来中国市場でビジネスを展開する際、高官に便宜を図ってもらうことを狙った。

「同大学では、少なくとも200人の教職員が中国、または中国高官研修プログラムに関わっている。明らかに、この研究プログラムが、教職員の生活に影響を与えている。だから、大学側にとって寄付金はありがたいものであろう」と横河氏が述べた。

欧米側では当時、中国高級官僚を人材育成プログラムに受け入れることで、官僚に西側の民主主義の思想に順応させ、最終的に中国の民主化を推し進めていくという期待感を持っていた。横河氏は、「ここ20年間の経験から、欧米側のこの考えはただの片思いにすぎなかったと言える」とした。

世界各地の「党校」

ハーバード大学のほかに、他の欧米名門校が中国共産党の高官に研修プログラムを提供した。香港誌「鳳凰週刊」が2011年9月に掲載した記事では、中国当局は今まで約10万人以上の官僚を海外の大学に送り込んだと表示した。

同誌は、共産党の高級幹部を育成する国家行政学院(中国共産党中央党校)が1992~2005年にかけて、海外の大学との間で締結した双方研修プロジェクト協議42件の内容を入手した。最も多いのは米国の大学で、8件にのぼる。欧州では、英国3件、スイス2件、フランス2件、ポルトガル2件と、ドイツ、スペイン、イタリア、ギリシャ、ロシアなどは各1件。アジアでは、日本3件と韓国2件、トルコとモンゴルは各1件。他には、オーストラリアとニュージーランドは各3件。カナダは2件だという。

「鳳凰週刊」によると、共産党の高級官僚は米ハーバード大学などの名門校に集中する一方で、地方政府の幹部はシンガポールの南洋理工大学や他の国立大学を好む傾向がある。最高級の官僚の研修プログラムは、党中央組織部が管理し、派遣を行っているという。党中央組織部は党の人事を担当し、人材育成も担っている。また将来、要職への抜擢を見据える海外研修は「省レベルの官僚から県レベルの官僚まで、みな先を争って参加している」という。

中国メディア「網易新聞」の報道では、シンガポールの南洋理工大学は1992年から、中国地方政府の幹部に研修ブログラムを提供した。すでに8000人の幹部が同大学で研修を受けた。

米ニュースサイト「スレート」は、中国当局は、日本の東京大学の研修プログラムに高級官僚を送っているとした。

3月24日までに、ハーバード大学の教職員18人が中共肺炎のウイルス検査で陽性反応が出たという。

転載大紀元(翻訳編集・張哲)

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