万字「卍」は古代から伝わる普遍的なシンボルマークであり、元々は幸福と幸運を表すサンスクリット語の「SVASTIKA(スワスティカ)」に由来する。そして万字「卍」は東アジアのみならず、古代東西の様々な文化の中に見ることができる。最も古い万字「卍」は古代インドと中央アジアにあるとされ、その時期は紀元前3000年から紀元前2500年までさかのぼる。
1933年に行われた研究調査によると、万字「卍」は紀元前1000年までにはインドからペルシャ、小アジアを経由して古代ギリシャに伝わり、その後イタリアからドイツに渡ったのではないかと指摘された。
ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)誌の書評欄主任スティーブン・ヘラー(Steven Heller)は「卍:取り返しのつかないシンボル(The Swastika: Symbol Beyond Redemption?)」という本に書いている。「シュリーマンは、万字「卍」はドイツ人の祖先の宗教的象徴であり、古代のチュートン人、ホメロス時代のギリシャ人そしてヴェーダのインド人を結び付けていると推測した」
実際、卍は古代ギリシャで広く使用されており、古代ギリシャの寺院や祭器には万字「卍」が見られる。紀元前10世紀から8世紀にかけての古代ギリシャ人によって使用されていた彩陶は卍で描画されており、古代ローマの祭壇などの建物にも卍が付いていた。万字「卍」は初期のキリスト教にも見られた。古代インド、チベット、日本、韓国など仏道修行を重んじる地域にも卍は見られる。
このように、万字「卍」は古今東西の古代文明に見られたのみならず、アフリカや南アメリカの文明でさえ確認することができる。フランスのルーブル美術館に保存されている6000年前のメソポタミアの陶器には万字「卍」が描かれている。さらにアジア人にとって卍は仏と関係が深いものだ。実際、多くの仏像の胸には万字「卍」が見られるのだ。
(原文・清源/翻訳・柳生和樹)※看中国より転載