【党文化の解体】第6章(19)

5.党話の特徴
 3)党話の抽象性と詭弁性

  正常な人間社会の言葉は具体的で、理解しやすいものである。古代の中国人は「身を修めて家を斉え、国を治めて天下を平和にする」を講じて、「天子から庶民まで、みな身を修めることを元にする」とした。たとえどんなに大きい抱負を抱えても、最も基本的な掃除の仕方、親や目上の人、兄弟、友人とのあいさつのやり方、靴やスリッパの脱ぎ方やそろえ方などから教育を受けないといけない。

 また、正統な信仰と道徳体系はいつも分かりやすい言葉で表現する。例えば「モーゼの十戒」で定められた「人を殺してはいけない」、『姦淫してはいけない」、「盗んではいけない」、「偽りの目撃証言をしてはいけない」はみな具体的な基準で、高い教育を受けていなくても、誰もが理解して実行することができる。

 しかし、中国共産党の党話は異常に抽象的であいまいなものである。言葉を抽象的にすれば、真相をすりかえて世間を欺くことが容易にできるからだ。党話を強制的に知識人と一般国民に注ぎ込めば、人々は自分の常識に踏まえて出した判断を信じるよりも、むしろ中国共産党のくどくて難しいイデオロギー的な言葉を信じたい傾向にある。

 中国共産党のいわゆる「土地改革」前、中国北方の農村では調和がとれた宗族関係が広く存在し、生死が問われるような激しい階層闘争は全然存在しておらず、地主と雇われ農民の間は一種協力的で、互いに助け合う関係だった。しかし、共産党が来てから、村の不良とごろつきに反逆するよう扇動し、農民に階級の憎しみを注ぎ込んだ。大多数の農民は一生の中で実は中国共産党が言った「地主悪覇」を見たことがなかったが、勤労大衆を搾取し圧迫するのは「地主階級の本質」だと中国共産党が詭弁したので、「一部」の普通の農民は「マルクス・レーニン主義」、「毛沢東思想」の「科学的結論」を揺るがしにすることができなかった。

 農民は中国共産党の暴政を怖がり、また一方では中国共産党がねつ造した抽象的な「階級本性」を否定することもできなかったので、だんだんと地主階級が本当に存在しており、この階級は貧しい農民を圧迫して搾取しているのだと信じるようになり、良い暮らしを送るためにこの地主階級を徹底的にやっつけるか、あるいは彼らをプロレタリア独裁のもとに置いて大人しくしてもらうしかないと思うようになった。

 あの時代の中国において、これは代表的な現象であった。中国共産党のうそが全国民を欺くことができたのは、党話の抽象と詭弁の功労が大きかった。中国共産党の毎回の政治運動にも、このような現象が現れていた――家族、友人など天然存在の倫理感情を信じずに、ひいては自らの体験も信じずに、人情の常識を背く中国共産党の理論を信じた。文化大革命の時に親子が反目し、夫婦が仇同士になって、互いに密告しあって相手を裏切るという惨事はこのように発生した。

 『現代中国語使用頻度辞書』によると、現代中国語語彙全体の中で、「主義」の使用頻度は第37位に並び、名詞の中で第四位に並ぶという(「人」、「上」、「中」に次ぐ)。中国共産党第十二期全体大会の報告に「主義」は253回現れて、第十三期全体大会に250回、第十四期全体大会に216回、第十五期全体大会に253回、第十六期全体大会に155回に現れたそうだ。中国共産党の公文、新聞雑誌、教科書の中でよく見られる「主義」を語尾にした語彙にマルクス・レーニン主義、共産主義、社会主義、封建主義、植民地主義、資本主義、帝国主義、覇権主義、唯物主義、唯心主義、主観主義、命令主義、宗派主義、機会主義、冒険主義、逃走主義、排他主義、自由主義、教条主義、形式主義、修正主義、集団主義、英雄主義、官僚主義、本位主義、本一冊主義、水一杯主義などがある。今日では、ほとんどの人はこれら語彙の意味が分からないが、中国共産党の政治運動の中で「××主義」の罪名が数多くの中国人を死地に赴かせたのは事実だ。

 党話を抽象的にしたことで、中国共産党は自分の需要に応じて恣意に言葉の意味を解釈することができるようになった。もし具体的で、はっきりとした言葉を使うと皆は分かってしまい、中国共産党のうそは通用しなくなる。毛沢東時代の「社会主義」は「プロレタリア独裁の下で革命を継続する」、_deng_は「貧しいことは社会主義にならない」のスローガンを唱えて、江沢民時代になると資本家も共産党に加入できる、となった。では、「社会主義」とはいったい何であるか? はっきり言うと、中国共産党がやることが皆「社会主義」なのである。

(イラスト・大紀元)

「階級」、「路線」、「認識」、「左派」、「右派」、「進歩的」、「反動的」、「公有制」、「社会主義」、「中国の特色」など抽象的で難解な党話は幾重の黒幕を成して、中国共産党は黒幕の後に隠れて、自身の利益と生存のために、内部で互いに争いながら、人民を無情に圧迫している。

4)党話の吸収性と産出性

  党話にはまた吸収性と産出性の特徴を備えている。吸収性とは、正常な人間社会の言葉を統合して改造して自分のものにする、ひいては外部からの批判の声を自分の言葉として吸収する。中国共産党は恥知らずに人類歴史上の文明成果を盗んで自分のものにした。「愛国」、「中華民族の偉大な復興」、「徳を以って国を治める」などもともと素敵な言葉を中国共産党に長期にわたり専用されたため、今これらの言葉を使うと反感を買うことになりかねない。

 産出性とは、党文化は新しい言葉を創り出す能力を持っている。中国共産党は厳密な組織と社会を統制する手段を持っている。いったんこの邪悪な政権の中枢――指導者あるいは党中央――は何か方針と政策を定めたら、下部組織は政権の四肢のように効率よくこの政策を執行する。執行の中で大量の党話が作られる。

 ここ数年、中国共産党は主に三つのモデルで新しい言葉を創り出していった。一、党文化+伝統文化用語、例えば「徳をもって治める」、「調和がとれた社会」。二、党文化+科学技術用語、例えば「××プロジェクト」(希望プロジェクト、住環境改善プロジェクト、副食品供給プロジェクト、食糧供給プロジェクト、再就業プロジェクト、「二一一プロジェクト」、「五つの一プロジェクト」)。三、党文化+西側諸国の用語、例えば「××意識」(政党意識、首都意識)など。

 党話の吸収性と産出性があるために、一時期の党話が淘汰されたら、また新しい党話が造り出される。党話は使用される過程で、混じり合い、変形をして、色も形も変わり膨大な数の変種が現れるので、中国人はこれらを防ごうにも防ぎようもない。

 (続く)

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