7)実証科学は宇宙の法則を探求する唯一の方式ではない
1994年3月1日、秦始皇陵の兵馬傭の二号坑が正式に発掘され始めた。考古学者たちは、二号坑の中から大量の青銅剣を発見したが、その刀身は八つの稜面を呈していた。ところで、考古学者たちが、各稜面の広さを測定してみたら、驚くべきことに各面の広さの誤差は髪の毛一本よりも小さかった。既に出土した19本の青銅剣も皆同じであった。
もっと不思議なことは、これらの青銅剣が黄土の中で2000年余りも埋もれていたにもかかわらず、出土した時には完全に新しいもののようで、刃が驚くほど鋭利であった。科学者たちが測定した結果、剣の表面は10ミクロンほどの厚さのクロム化合物でメッキされていたことが分かった。この発見は全世界を震撼させた。なぜなら、このような「酸化クロム」の加工技法は、最近になって現われたとても先進的な技術だったからだ。ドイツでは1937年、アメリカでは1950年に発明されて特許を取得した技術である。
これだけではなく、考古学者たちが秦始皇陵の一号坑の通路を整理した際、重さ150kgの陶俑(とうよう:焼き物で作った人形)により押し曲がった青銅剣を発見した。曲がった角度は45度を超していた。しかし、驚いたことに、その陶俑を移した後、曲がっていた薄い青銅剣が、一瞬のうちに真っ直ぐに回復したのだ。現代冶金学の専門家たちが目指していた「形状記憶合金」が、2000余年前の古代墳墓の中から現れたのだ。「形状記憶合金」は現在用途がとても広く、女性のブラにも使われているのだが、この1980年代の科学技術発明が、紀元前200余年の時代にすでに存在していたなどということを、誰が想像できたであろうか。
一つの仮説を立てて考えてみよう。もし、上述の不思議な鋳造技術が実物で残されておらず、単に中国古書の中に記録としてのみ残っていて、かつ現在人類の科学でまだこれと類似する技術が発明されていないと仮定しよう。その場合、中共党文化のいわゆる中国古代文明を「批判的に継承する」という観点に従えば、現代人にも発明できない技術が古書の中にあった場合、それは間違いなく「迷信」とか「芸術的な想像」としか見なされないはずだ。そして同時に、「偽科学に反対する」、「偽学問を潰す」という御用学者たちは、必ず古書の文句を引用しながら、この記録の「荒唐無稽」を大げさに論証するであろう。
実際は、これこそ中共が長期にわたって現代科学を宣揚し、人々に現代実証科学が唯一の真理だという硬直な考え方を押し付けてきた結果である。このような考え方の影響を受けた人々は、現代科学がまだ探索していない領域やまだ解釈していない現象を一概に排斥して、それに「偽科学」や「迷信」というレッテルを貼り付けて攻撃するのである。
中国古代の科学技術は、西洋で発達してきた実証科学の道を歩まなかったのだが、そうだからといって、それを荒唐無稽のものだと見なしてよいだろうか。前述の仮説から考えれば、中華の祖先が数千年来にわたって遺してきた文化遺産のうち、多くの「迷信」だと思われたものの中には、きっと現代科学ではまだ認識できない古代文明の粋があるにちがいない。
古代の中医学は、経絡を発見し鍼灸を発明した。現代科学は既に皮膚の電気抵抗などを測定する方法で、経絡と穴位の存在を客観的に実証した。中医学療法の効果は、既に世界保健機構によって高く評価されている。人体の経絡と穴位は、一種の生命特性として、生きている人体にしか現れない。経絡の働きは精神の状態に影響されており、しかも解剖学的な構造特徴に関わらない。実証科学の考え方に従って、西洋医学の解剖学の方法で経絡を検証しようとしても、何も分からない。特に古人が天干と地支の五行相生と相剋を利用して見つけた穴位の開合と、エネルギー流注の時間とともに変化する規律は、臨床治療に利用されると、よりすばらしい効果が収められる。これは解剖学を基礎とする西洋医学では考えも及ばないことである。
実際は、中国の古代人たちは、修煉の方法を通じて経絡の運行を直接観察することができたのだ。明代の医学者・李時珍は、その著作『奇経八脈考』の中で「内景隧道(=経絡)は、反観内覧(瞑想座禅中に自分の体内を観察する)の方法でしか観察できない」と書いている。中国古代の科学は、天人合一の視点から、人間の肉体と精神及び宇宙を一つの密接に関連している全体と見なして、全般的に研究してきた。
明らかなことは、いったん人間の精神活動をも研究対象の中に入れて生命現象を全般的に研究することになれば、実証科学に要求されている再現性、分解、還元といった方法論は、もう適用できなくなる。この点から見れば、実証科学を根拠にして中国伝統の修煉文化を攻撃する人は、自分が真理を掌握していると思うかも知れないが、実際は党文化に惑わされ、偏狭な視野で現代科学を宗教化、権威化、甚だしくは政治化してしまったのである。
(続く)