終戦後、日本は大変な食糧難に陥った。 時の総理大臣吉田茂はGHQに米の供給を依頼した。
GHQは「吉田どのくらいの量が必要か」と聞いてきた。時の混乱状態の中、実は吉田もどれだけ要求をすれば良いのか検討もつかなかった。が、吉田はエイヤッと適当な量を伝えてしまった。 GHQは、直ぐ吉田の要求分の米を用意した。
吉田は、感謝しすぐ国民に米を配給させた。 ところが、困った事に米がかなり余ってしまったのだ。 吉田の配下の大臣達は、GHQに激怒されると思い誰も過剰な量に対するお詫びが出来なかった。そしてその米余りの情報は遂にGHQに漏れてしまった。
すると早速GHQの担当官が文句を言いに総理官邸にやって来た。そして吉田を見るや否や「吉田、お前は国民に配る米の量もまともに調べられないのか、どうする、責任をとの様に取るんだ、、、」と一頻り吉田を怒鳴りまくった。
するとその米兵の言葉を遮って吉田がスッと起立し、静かに言った。 「この米の量を間違える様な事がなければ、日本はお前達米軍には負けなかったろうな」と言った。 これを聞いたGHQの米兵は暫く吉田の顔を見つめ、静かに吉田に近付き、何も言わずに右手を差し出し吉田と握手をした。
敗戦の日本国の混乱の中、日本国民を守る為、米国と一歩も譲らず交渉を続け、日本国の政治を導いた吉田茂の男の心意気を米兵も感じたのだろう。
乃木 晃